「人生の午後に」を聴いて
煙草を口に咥えて呆気にとられたまま泣いてしまった。
真夜中にエレファントカシマシのアルバム「町を見下ろす丘」を小さい音でかけていた。
ブログやSNSなどを眺めながら流し聞きというやつだ。
もうどんな記事を読んでいたのかも思い出せない。
気づいたら曲に気を取られ、ぼうっとしていた。
陰鬱な曇り空のような、じめっとしたイントロ。
なんだっけこれ、この感じ、聞いた事があるぞ。夏の日の怪談みたいだな。等と思いながらスマホを見るのを止めて音楽を聴いた。
「うれしいこと悲しいこと色々あるけれど
つまらないよ全部全部 色あせて見えるから」
ぎくっとした。
「思ひ描いた日々と今の自分を重ねて
窓の外を眺めていた 重く垂れ込むる雲」
物憂い歌声だった。辛かった。し、嬉しかった。
「カーテンが揺れてる 風で(ご覧よ)
さっきいれたお茶がもう冷めてしまった(入れ直さなきゃ)」
世にも切ない「(入れ直さなきゃ)」だった。
一人の部屋で誰に言うでもなく口をついて出た「(入れ直さなきゃ)」に聞こえた。自分の他に誰も聞いていない声。コミュニケーションの道具で無い声。
頭の中にいつか住んでいた部屋の情景が広がる。
脳内の景色はタイムトリップしているのに、置かれた自分の気持ちは”今”だった。
まさに「思ひ描いた日々と今の自分を重ねて」いた。
音楽を聴いていると自分の今の気持ちを言い表されたようにピタっとくる時がある。
そういう瞬間はとても嬉しい。だけど、感情が揺さぶられてとても苦しい。
私にとってそういう曲だった。
繰り返し何度も何度も聞いた。
楽器の奏でるメロディもヴォーカルも暗鬱としている。
特に私が何度も聞きたいと思うのは「つまらないよ全部全部」の最後の「ぶ」の音色や、語尾の音の伸び。
歌詞に歌声がこれ以上ないくらいきっちりハマっている。
宮本さんの歌声には幾度もはっとさせられる。
もの凄い表現力だと思う。
とてもBGMには出来ない。